火焔日記 4月29日 (英吏がらみSS・後編)

4月29日(放課後)


ハンガー前で剣さんに会う、急に振り向いたんでびっくりした。


「どしたの?あたし煩かった?」
「いや、君の香りだ…と思って」

剣さん、柔らかく笑う…幸福そうに。

「…なんだか懐かしい感じがするなぁ。つい引き寄せられてしまう。」

は、あの、すっげードキドキする台詞をそんな穏やかな表情で言われたら…
なんか、こう……世界が違いますよ剣さん。

固まる火焔、噴出す剣さん

「は?」
「いや……怒っているな」

え、誰が?

「英吏、用事があるんだろう、連れてっていいよ。僕ら、話しをしていただけだ」


微妙なアクセント……さすが剣さん、この人はホントに底が知れないなー。
見た目無表情に近寄る英吏。「何か用?」とか昨日の仕返ししようかと思ったけど止めた。
剣さんにバイバイして英吏にくっついていく。

あ、ちょっと早足?

誰も居ない体育用具室。なんかちょっとイカガワシイ。

「先日の『仕掛け』の件ですが」

お、唐突…。単刀直入……照れ隠しかい?
にやけていると睨まれる、慌てて表情筋を緊張させた。

英吏の仕掛け…それは高官共の子息令嬢を人道的に人質にしようというものだった。
彼らの仲間意識に訴え、転属願いを蹴って、人の親としての一番弱い部分を握ろうという作戦。

聞き終わって、あたしは笑った。
鼻で笑いながら言った。

「それは紫苑やくーちゃんのことかな?」

英吏は何も言わない。

「くーちゃんは兎も角……紫苑はあたし担当?」

爽やかに笑いながら、殺意を滲ませる。

「紫苑を篭絡しろって?」

言いながら、手近にあったサンドバックを思いっきりぶん殴る。
釣ってある鉄筋が軋んだ。怖いくらい揺れている。白兵3だもの、突撃Sだもの、神のコブシなめんな?

「無駄でしょ、あいつ…あたしに何て言ったと思う?」

いじめてやる。意地悪してやる。

「『僕の実家は、それなりに恵まれていてね、その恩恵にあやかりたくはないんだが…君のためなら、何でも…』続き聞きたい?」

深いため息を吐く英吏……何か言おうとしたのを制するように、先に口を開く。

「あたしは、身の回りが不幸になるのを赦さない」

瞳に渾身の力を込める、英吏が息を呑む。

「どんな些細な絶望も粉砕してやる」

言い切った…。どうだ。
英吏は眼鏡のブリッジを押すと気持ちを落ち着けたようだった。
いつものように意地悪そうに笑うと、からかうように訊いて来る。


「お前の敵は俺ではないな?一体何と戦っている」

「運命、絶望、史実……『この世界』の糞っ食らえなモン全てと」

胸を張る火焔、朗々と謡うように、誇り高い炎の如くに


「悲しい結末?報われない想い?……はっ!!反吐が出る」

真っ赤な髪を振りさばく、青い瞳が爛々と輝いた。

「決められた不幸なんて、あたしが滅茶苦茶にかき回して全部無駄なものにしてやる、
 捕まえられる絶望は余すことなく地獄送りだ。幸せになれないなんて、そんな訳が無い
 立ち塞がれば、幻獣だろうが運命だろうが叩きのめしてやるんだ」

「ならば、立ち塞がったのが…お前が守るべき仲間なら?」

「愛をもってぶん殴る、そんでもって抱きしめて更正する」

英吏が噴出した、笑う。火焔も笑った。

「それは更正か?」
「う~ん、違うかも?」
「馬鹿め、それは強制というのだ」
「あ!それそれ」

咳き込むほど笑って一息つく。

「ごめん、意地悪した」
「悪い、俺もだ」
「あ、やっぱり?駄目じゃん作戦参謀。」
「お前が悪いだろう?」

ま、そうかな?
紫苑とも、英吏とも友達以上恋人未満……うわー、あたしが一番甘酸っぱいや。

「嫌なら止めりゃーいじゃんか」
「ふん、俺は粘着気質なのだ」
「威張って言うかなーそれ。」
「紫苑こそ諦めれば良いのだ、何ヶ月恋人未満やっているつもりか」
「あはは、すんませんねー。じゃあ今日にでも『好意を伝え』てこようかなー?」
「む。自分でもずるいと思わんのか」
「思うけど、オイシイ方を取る!」


英吏は呆れて、でも笑いながら盛大にため息を吐いた。


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